航空交通管制システムに関する調査研究
- 交通流管理機能等
空域安全評価及び航空機運航者から提出された障害報告に関する事案分析作業を実施しています。
- 空域安全性評価業務補助作業
日本では2005年9月30日から、基準を満たした装置を積んだ飛行機同士の高さの間隔基準がそれまでの2000フィート(約600m)から1000フィート(約300m)に短縮されました。
これにより、飛行機にとって高さの選択肢が増え、燃料を節約したり飛行時間を短くする事が出来るとともに、同じ空域を飛ぶ事が出来る飛行機の数が増える事になり、増え続ける航空機の量に対応する事が可能になりました。
ただし、飛行機同士が近づくことになるためにICAO(International Civil Aviation Organization:国際民間航空機関)は、このやり方を行っているすべての国に対して、飛行機が運航している高さを監視して安全性を確認する「高度モニタリング」を行うように決めています。
日本でも国土交通省航空局がHMU(Height Monitoring Unit:高度監視装置)と言う機械を瀬戸内(小豆島)、新潟、仙台の三か所に設置して監視しています。
航空交通管制協会は航空局が行っている高度モニタリングについて、飛行機のデータベースの管理やHMU上空を通過した飛行機の高さのデータの整理と公表などの作業を行っています。日本空域安全性モニタリング機関(JASMA)ホームページ(英語)
http://www.jasma.jp/index.html
- 繁忙空港における航空交通管理
大都市圏拠点空港等の空港処理能力拡大に向けた調査及び空港における協調的意思決定の過程を経た航空機の効率的な運航方法の調査を実施しています。
- 安全報告制度管理運用
航空管制官からの安全報告制度の充実を図るため、管制業務の提供において発生した不具合事例等を収集して航空安全プログラムに基づき分析し、再発防止策を策定しています。
[管制エラーを無くす為に]
この10年の間に羽田空港では、4本目の滑走路運用開始、管制の運用が見直し、深夜便の導入等環境の変化により単純に比較することは出来ませんが、11年前の平成16年の羽田空港の着陸回数は152,673回であり、平成25年は10年前の約1.3倍増の201,621回となっています。また、羽田空港利用者は年々、増加し続けています。
羽田空港だけではなく、新千歳、成田、関西、福岡、那覇空港等も同じく利用者が増加しています。二本目の新しい滑走路建設が那覇空港で進められており、福岡空港では予定されています。飛行機が飛び交う空は今以上の混雑に拍車がかかることとなります。
空の安全を確保する航空管制官にはミスが許されません。航空管制官のミスは、悲惨な航空事故に結びつく可能性が大きいのです。人間はミスを起こすものですが、一度経験したミスを起こす確率は大きく下がります。
一般財団法人航空交通管制協会は、航空管制に係る事案を集め分析し、事案情報を航空管制官みんなのものにする事業を長年行っています。また、昨年よりパイロット、客室乗務員、整備士等の人達と、安全上「ヒヤッとした」「ハッとした」情報を集め、予防的対策に役立てる制度である「航空安全情報自発報告制度(VOICES)」にも参画し、航空活動する人達と『空の安全確保』の一翼を担っています。
- 次世代航空管制運用に関するシミュレーション調査・研究
2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されることなどで、今後、空港や空の交通がより増えることが予想されます。
そこで、空港の離着陸機数をどのように増やしたら良いか、また、空の道をどのように使って管制したら良いか、そして、それにより更に増える航空機を安全で効率的に飛ばせるにはどうしたら良いかが私たちの国や諸外国で重要な課題になっています。
それは、仕事や旅行で航空を利用される皆さんに快適なフライトを提供するためにも大切なことです。そのため、将来に想定される交通環境をシミュレーションして、航空管制の新しい運用のやり方に関する解決策を得るため、調査・研究を進めています。
皆さんが車を運転するとき、自分で前の車との車間距離をとって安全を確保し、道路やレーンに沿って運転します。航空機も同じように前方の航空機との最小間隔(最小距離・時間)を維持し、空の道に沿って飛行しますが、航空機は非常に速いですし、空中では止まれません。そのため、航空管制官が最小間隔を下回らないように、また、決められた空の道を円滑に飛行するように管制しています。
シミュレーションでは将来の交通データを作成して、例えば、下の挿絵:シミュレーション空域モデル例(仮想)の外枠の大きさと形状(管制する空の範囲)、航空機の流れ方(矢印の方向や位置)、交通量(流れる方向ごとの矢印の数)、飛行方法(上昇・降下、減速・増速のやり方)、前後の矢印の間で定める最小間隔などを変えて解決策を得るための作業を繰り返します。
シミュレーション表示の一部:図中ⓐは西日本方面からの到着機(最小間隔維持)、ⓑは北日本方面からの到着機
ⓒは北米方面からの到着機(最小間隔維持)、ⓓは中部太平洋方面からの到着機
- 航空関係団体等への参画
日本航空宇宙学会、航空関係団体が組織する委員会に参画し、調査・研究を発表するとともに、航空に関する調査・研究の最新情報を収集しています。
- RNAV(広域航法)経路設計等
次世代航空航法に基づく回転翼機用RNAV経路を設計しています。
※広域航法(こういきこうほう、英: area navigation)とは航空機の航法の1つであり、機上に自蔵航法装置等を備えることで、従来の無線航法のように航空保安無線施設の位置に左右されることなくルートを設定する航法システムです。
- 航空交通管制組織のあり方
将来における我が国の航空交通管制組織に期待される社会的ニーズに対応できるような組織のあり方に関する調査を実施しています。